ある雑貨屋の店先にいつしか狸が現れるようになったという。
狭い路地の奥にある店は日当たりが良いわけでもなく、植え込みがあるわけでもない。
店の前に商品が並べられた棚が置いてあるだけで、特に居心地が良いようにも思われないのに、
ふと外を見るとその狸が一匹たたずんでいるのだそうだ。
けれども近づいてみようとするとすぐにどこかへ逃げて行ってしまうのだ。
そんな話を店の主人から聞き、会計を済ませて私は店の外に出た。
あっ、狸!
私が気が付いた時にはもうすでに狸の後ろ姿は小さくなっていた。